くろいヘドロ

オタクです

2+2=5

「なあ、2+2は?」

 

突然太一が口を開いた。

 

「…4」

 

意味が分からないまま俺は答える。

 

「5だよ。」

 

太一はニヤニヤしながら言った。

 

「はあ?」

 

俺はため息をついた。

 

「下らない。なんかの引っ掛け?考えるのも面倒くさい。タネを教えて。」

 

「…例えば、『2+2=5』って答えないと殺される国があるとする」

 

「……はあ。」

 

「その国にとっては、2+2=4であることは都合が悪いんだ。」

 

「なぜ?そんなことあり得るか?」

 

「まあ黙って聞けって。」

 

太一は俺の質問には答えず、そのまま続けた。

 

「だからなんとかその国は2+2=5だと国民に言い聞かせることにした。国民はそれを鵜呑みにする。で、国民は愚かにも2+2=5って答えるってわけ。」

 

「まあ言ってることは理解したが…何が言いたいんだ?」

 

二重思考の説明。『1984年』って知ってる?ジョージ・オーウェル。」

 

「名前ぐらいは。読んだことはない。」

 

本当は聞いたこともない、ということは黙っておく。多分有名なんだろう。

 

「矛盾している2つのことを同時に真実だと信じる。それが二重思考。2つの思考が同時に、二重に存在するから、二重思考。」

 

「それは信じている振りではなく?」

 

「振りじゃないさ。本当に信じてるんだ。さっきの2+2の話に付け加えると、国民は2+2=4でもあると思ってる。」

 

「は?」

 

「2+2=4でもあるし、2+2=5でもある。3にもなるし、なんなら0にもなる。」

 

ぐちゃぐちゃだ。

 

「国民は『2+2=5』と『2+2=4』が同時に存在することに違和感を感じない。俺が今こうやって指を数えながら2+2=4であることを説明したら、そいつらは『確かにな、2+2=4だ。』と納得する。でも政府がいや、2+2=5だと説得したら、『仰る通りです。』と『本気』で言うんだ。」

 

「つまり、その国民は壊れてしまってるってことか?」

 

「そういうことだ。同じ数式に2つ答えがあってもいいと思考することで、違和感を正当化するのさ。…お前、酒飲むの好きだろ?」

 

「…まあ。」

 

「もし、酒なんて不健康だから辞めろ!って言われたら、なんて言い訳する?」

 

「言い訳って…。」

 

太一のその言い方に少しイラッとしたが、事実だから仕方ない。

 

「酒は百薬の長って言うだろ?って冗談半分に答えるかな。もとよりそんなこと言われても辞める気はないよ。」

 

「酒は不健康だってことは理解してるだろ?」

 

「ああ。でも好きだから飲んでる。」

 

「お前はその『酒は不健康』という事実を理解しながら、『それでも酒を飲む』ということを『好きだからいい』という理論で何とか正当化しようとしてるんだ。でもまあ、完全には出来てなさそうな感じだけど。」

 

「確かに俺はアル中一歩手前のカスだが、お前のヘビースモーカーっぷりにも、同じことが言えるだろ。わざわざ今日も喫煙可能な居酒屋に呼んできて、酒も飲まず煙草片手にこんな訳のわからない話をしやがって。」

 

俺は呆れ笑いをしながら3杯目のビールを口に運ぶ。

 

「居酒屋でなにか飲まないといけないって法律はないだろ?」

 

何本目かも分からない煙草を蒸しながら太一は言った。

 

俺はそれを聞いて、少し考えたあとニヤリと笑う。

 

「それこそ、二重思考なんじゃないか?『居酒屋は酒を飲む場所』だと理解しながら、『居酒屋で酒を飲まないどころか何も注文しない』という選択をしていることに違和感を感じていない。話を法律の部分まで飛躍させて、その違和感を正当化しようとしてるんだ。」

 

「…一本取られたな。でも居酒屋では酒を飲むべきだ。俺はそれを心の中で分かっていたし、注文しない自分を申し訳ないと、いつかしないとなあとずっと思ってた。その時点でこれは二重思考でもなんでもない。」

 

「じゃあとっとと注文しろよ。話に夢中になってただけだろ。酒が無理ならウーロン茶でも頼んでろ。」 

 

俺は太一にメニューを投げ付ける。

 

太一は渋々店員を呼び、ハイボールを注文する。店員の「やっとこいつは酒を飲むのか」と言いたげな苦々しい顔が爽快だった。

 

来たハイボールを3口ほど飲んだあと、太一は気まずそうに口を開いた。

 

「でも、そんなふうに考えていったら、俺達の周りのこの世界には俺達があらゆる方法で正当化しているだけの『認識されてない違和感』が多くあるかもしれない、と思えてくるよな。」

 

「随分飛躍したな。」

 

「テロリストとかってこういうところから生まれてくるんだろうな。あいつらは俺らより先に違和感に気付いてしまった。だから革命を起こそうとしてるのかも。」

 

太一はまた煙草に火を付ける。

 

「そもそもこの世界って現実なのか?」

 

俺は意地悪く言ってみる。

 

「俺達が『この世界が現実である』と信じることは、本来は違和感を感じるべきことだと言いたいのか?」

 

太一もまた意地悪そうに、具体的に返してくる。

 

「そうさ。」

 

まさか答えがあるとは思わなかったという驚きの顔で太一は俺の顔を見た。

 

俺は重い口を開き、言った。

 

「お前がこの話をするより前の記憶が無い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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元ネタ

 

 

 

 

 

 

漏れの健康的な起床を見た海外の反応

アメイジング!これだから日本は辞められないんだ!(34歳 アメリカ 男性)」

 

「彼の健康的な起床を生で見るために日本に来たんだ。ようやくお目にかかれて嬉しいよ(21歳 フランス 男性)」

 

「俺のパパも昔日本に住んでたけど、この起床具合はまだまだだってさ。ジャパニーズクオリティはこんなもんじゃないってパパが誇らしげに言ってるよ。(17歳 カナダ 男性)」

 

「私のボーイフレンドもこれくらい健康的な起床をしてくれないかしら。(19歳 イタリア 女性)」

 

「侍の技ね…素晴らしいわ(41歳 ロシア 女性)」

 

「ハハハ!こんなのありえないよ!編集だろ?あまりに健康的すぎる。もしそうじゃないなら、『神』と呼ばせてもらうよ。(36歳 イギリス 男性)」

 

「編集なんかじゃないさ。これは彼にしかできない立派な技術だよ。イギリス人は考えすぎる習性があるようだね、反省したまえ。(32歳 ドイツ 男性)」

 

「オタク(23歳 韓国 男性)」

 

「これくらい俺にもできる(28歳 中国 男性)」

 

「笑わせないで。人類でこの健康的な起床の境地に達しているのは彼だけよ。中国人には無理。(21歳 モンゴル 女性)」

 

「個人的にはもっと豪快さがほしいかな。だがここまでのものは初めて見た。(42歳 スペイン 男性)」

 

「日本では彼みたいなやつのことをINKYAと呼ぶんだろ?(25歳 イギリス 男性)」

 

「最近俺もその言葉を知った。反対語はBARIYOUKYAというらしい。そっちも一度でいいから会ってみたいね。(29歳 スイス 男性)」

 

「見てるだけでワクワクするよ。僕も早く日本に行きたい!(11歳 イタリア 男性)」

 

「健康的な起床の発展に彼は大きく貢献した。健康的な起床が今世界的に流行しているのも彼のおかげだろうよ。(60歳 インドネシア 男性)」

 

「是非とも我々の劇団に招待したいわ。この起床が今の演劇業界には必要なの。(25歳 オーストリア 女性)」

 

「あいつらの精神はどうなってんだ?俺は彼のベッドに敬意を表すよ(29歳 フランス 男性)」

 

「俺は日本のクレイジーなところが好きなんだ!まさしくこれはその象徴だよ!(57歳 カナダ 男性)」

 

「この起床を現地の言葉で理解したくて日本語を学んだ。初めて見たのは11歳のとき。また見ることができて嬉しい。(18歳 メキシコ 女性)」

 

「情熱と冷静さを兼ね備えた完璧な起床。彼こそがまさしく『伝説のキショニスト』(80歳 ギリシャ 男性)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても不細工だな(14歳 アメリカ 男性)」

 

 

 

 

 

 

 

【ゲーム考案】オタサーの危機を救え!

ゲームの概要

 

ターン制バトルであり、プレイヤーはオタクとバリ陽キャに分かれる。

 

オタクは姫をバリ陽キャから守り、あわよくば自分が姫と付き合うことを、バリ陽キャはオタクを出し抜き姫を我が物にし、オタサーを崩壊させることを目的とする。

 

バリ陽キャは一人で、他はすべてオタクである。じゃんけんとかで適当に決めればよい。

筆者が考える最も楽しそうな人数はオタク4、バリ陽キャ1である。

 

オタクには姫を「守る」「守らない」、バリ陽キャには姫を「攻める」「攻めない」の選択肢が毎ターン与えられる。

バリ陽キャには攻めると書かれたカード7枚、攻めないと書かれたカード3枚の10枚のカードの山札からゲーム開始時3枚引き、毎ターン開始時一枚引く。それを切っていく形で選択肢を開示する。

オタク側にはこのような制限はなく、ターン開始時守るを選択した者が挙手する形で選択肢を開示する。

 

この選択肢の組み合わせによって、そのターンにおけるオタク、バリ陽キャのどちらが勝つか決まる。

選択肢について教え合うような会話はしてはいけない。

 

これを繰り返し、先に7ポイント取った側がゲームに勝利する。

 

先に書いておくが基本的にオタクが不利なので、オタクが勝った場合の獲得ポイントはバリ陽キャのそれより高く設定されている。

 

 

バリ陽キャが「攻める」を選択

 

・オタクが一人だけ「守る」を選択していた

 

一人のオタクが騒ぎ立てたところでちんぽビンビンのバリ陽キャには勝てないが、間違いなくその場は白けるのでこのターンは『引き分け』である

 

だが、「姫が二度同じオタクによって守られる」という状況が成立した場合、姫がこのオタクに惚れてめでたく結ばれ、バリ陽キャの介入する余地がなくなりこの「オタク」 が「行動を起こしたオタク」にクラスチェンジし、この「行動を起こしたオタク」がゲームに強制的に一人勝ちする

 

 

・二人のオタクが「守る」を選択していた

 

オタクでも二人ならギリギリバリ陽キャに勝てるので、このターンは『オタクの勝ち』であり、オタク陣営に2ポイント。

 

 

・3人以上のオタクが「守る」を選択していた

 

オタクが3人以上集まったら逆に連携が取れないので、このターンは『バリ陽キャの勝ち』であり、バリ陽キャ陣営に1ポイント。

 

 

・誰も守らなかった

当たり前だが、このターンは『バリ陽キャの勝ち』であり、尚かつバリ陽キャに詰められてるのにオタクが誰も助けに来なかったという事実に姫はかなりショックを受けるので、バリ陽キャ陣営に3ポイント。

 

 

バリ陽キャが「攻めない」を選択

 

何もないのにオタクが急に現れても意味不明なので、「守ったオタクがいる」時点で強制的にこのターンは『バリ陽キャの勝ち』であり、バリ陽キャ陣営に1ポイント。

 

誰も守るを選択していなかった場合、このターンはオタクのイキリもなく、バリ陽キャの介入もなくオタサーが大いに発展したということなのでオタク陣営に4ポイントが与えられる。

 

 

特殊役職

ここでは、オタク、バリ陽キャ以外の役職を紹介する

 

 

・行動を起こしたオタク

結局行動を起こしたやつが全てにおいて勝つのだ。

前述の通り、「二度同じオタクが一人だけでバリ陽キャから姫を守ろうとした」という状況が起こればそのオタクがこれにクラスチェンジし、一人勝ちする。

オタク陣営は、自身の陣営の勝利とこの行動を起こしたオタクを発生させないことを慎重に判断しながら選択する必要がある。

 

 

・彼女持ちイケメンオタク

上級者向け。いなくてもよい。

オタク陣営を勝利に導くことに特化したオタク。

他のオタクよりは力もあり、バリ陽キャと渡り合えるコミュ力を持っているので、このオタクだけが姫を守ろうとした場合も引き分けではなくオタク陣営の勝利となるというメリットを持つ。しかし、このオタクは行動を起こしたオタクになれない。もう行動を起こしているからである。

何度も姫を守ろうとすると恋人に嫌な顔をされるので、2回連続で守るを選択することはできない。しかしこれはデメリットではなく、自分が守れないことが確定していることによりオタク側が自身の動きを考えやすくなるというメリットの部分のほうが大きい。

ほかは普通のオタクと同じ能力である。

後述する陰湿人間と役職が被ることはない。

 

 

・陰湿人間

上級者向け。いなくてもよい。これもバリ陽キャ同様一人で良い。

第三の陣営。オタサーに所属しているが、オタサーの姫をオタクが囲っている様が面白く、動画を撮影しツイッターに晒し上げることを目論む最悪の人間。

このオタクはオタサーの姫を守ろうとする振りをして、その様子の動画を撮影し、その映像をツイッターに投稿することを企む。陰湿人間は自身が陰湿人間であることを悟られてはいけない。

陰湿人間は表の顔はオタク陣営に属しており、基本的な能力はオタクと変わらないが、「守らない」を選択することで各ターン自分に1ポイント溜まる。盗撮し、ツイッターに投稿する時間が出来るからである。

陰湿人間が勝利する条件として、このポイントがゲーム終了までに掛かったターン数の半分(小数点切り捨て、3タテの場合は2ポイント)以上溜まっている必要がある。(溜まっていなければゲーム終了時自分が陰湿人間であることをCOし、敗北する。)

 

条件に当てはまっているオタクが存在した状態でゲームが終了したとき、「勝利した陣営」が陰湿人間だと思われるオタクを「特定」し、指名する。これが正解であれば、陰湿人間は炎上してしまい、敗北。不正解であれば、陰湿人間がゲームに一人勝ちする。

勝利した陣営が指名するので、バリ陽キャが勝利した場合一人で考えなければならない。つまりバリ陽キャ側に勝ってもらったほうが陰湿人間にとっては有利である。

 

 

まだ他のは思い浮かばないです

 

 

 

 

 

以上が僕の考えたオタサーゲームです。

 

人数がかなり限られるのがデカ目のデメリットっぽい。

 

終わり

 

 

 

 

 

 

「パクリ」と「オマージュ」

ドヒ松です

最近作曲をかじり始めたのですが、やはり僕も創作をする上で誰もが苦しまなくてはならない壁に直面してしまいました。

 

「何かのパクリにならないか」という不安です

 

いい感じのフレーズを思いついてそれを形にしたあとで、「よく考えたらこれ〇〇のパクリじゃね?」と気づいて萎えることが多々あります。僕なんて無名中の無名中の無名のカスなのですが、それでも何言われるか分かったもんじゃありませんし、「知ってる曲と似たフレーズを作ってしまった」という事実は自分の不甲斐なさが露呈するようで結構心折られます。

 

有名なアーティストにもこの「〇〇のパクリじゃね?」の矛先はしょっちゅう、というか毎日のように向けられています。

 

最近一部の界隈を賑わせたある事案をご存知でしょうか?

 

日本に住む人なら今や一度は聴いたことがあるであろう、King Gnuの「一途」です。



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かっけぇ。特徴的なカッティング(合ってますよね?)から始まり、それに重なるように

F#m→A7→D→C#→D→A7→A#→G

というコード進行が延々と展開される、想像以上にシンプルな構成の曲です。

 

後出しジャンケンみたいで申し訳ないんですけど、僕はこの曲を初めて聞いたとき、「おや?」と気づいてしまいました。

 

僕の好きなある曲にまあまあ似ていたからです。そして案の定、インターネットでは同じような意見で持ちきりでした。

 

 

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かき鳴らされるギターのパート→メインのパート→そのままAメロという展開も同じですし、

F#m7→A→D→C#m→Dm7

と一途とそこそこ似てるコード進行が展開されます。

まあ確信はもちろんないですが、暴風混乱くらいの確率で影響受けてると思います。「全くの偶然」と言われたら「それはちょっと見苦しくね?」と思ってしまう。

 

 

King Gnu関連でもう一つ提示しておきます。

ボーカルの常田さんが監修しているプロジェクト、millennium paradeの2992という曲。

 

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(公式の映像ではないのでちょっと申し訳ないですが)

特徴的なベースラインを延々と繰り返す曲です。

僕はベースラインの最初の音を聴いた瞬間から「あ~w」となってしまいました。こんなん「モロ」です。

 

 

 

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笑っちゃうくらい似てますね。

ベースの音の質感とかもそっくりです。

2992はサビでちょくちょく転調していたり、そもそも曲の展開が結構違ったりするのですが、このベースラインについてはもう偶然と言い張るのは無理でしょう。

 

※そもそもこのmillenium paredeの世界観が、イギリスのアニメのキャラが演奏しているという設定のGorillazというアーティストと似たようなものを感じます。(millenium paredeには3次元のMVもありますしこじつけかもしれませんが。)

 

↓millenium paredeの曲

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Gorillazの曲

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曲の空気感も似てる気がします。

もちろんどっちも好きですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、一途はBrianstormの、2992はNational Anthemのパクリなのか?ということなのかと言われるとそういう訳ではなくて、多くの人は「これはパクリではなくオマージュだ」と評価しています。

 

オマージュって何やねんってことですが、フランス語で「敬意」を意味する言葉であり、つまりここでの意味は「ある作品に敬意を払いながら、似た作品を作ること」ということです。

 

King Gnu常田さんはしばしば洋ロックが好きだという発言をしており、Arctic Monkeysなんてドストレートに好きと発言しています。

Radioheadに言及している情報は僕はまだ分かりませんが、洋ロックを聴くにおいてRadioheadを通らない人間なんて見たことがないので、まあ聴いてるんでしょう。)

 

だからこそ、この2つも多くの人に「オマージュ」という評価をされたという訳ですね。

 

言い方を変えれば、色んな曲を聴いて、それのことが好きだと発信し続ければそれと同じような曲を作ったとしても「オマージュ」になって許されるということ(なんかあれですけど)

 

常田さんの音楽の知識は本当に凄まじいものだと思っています。

その「音楽の知識が凄まじい」という予備知識があったからこそ、この2つの関係に並々ならぬ敬意を感じ、僕は快く受け入れることができたのでしょう。

 

 

 

 

King Gnuが売れているのは、井口さんを中心とした彼らにしかできないクソデカ個性と、常田さんの作曲能力の高さ、ちょくちょく織り交ぜられる古き良き時代へのリスペクト(バンド全体のヴィジュアルもひと昔前のUKロックを彷彿とさせる)が組み合わさって、僕みたいな厄介ヴィンテージオタクを含む多くの人を虜にすることができてるからだと思います。

 

僕に関して言えば、一途を聴いたときにBrianstormの影響を感じられた自分にちょっと嬉しくなってしまい、さらにKing Gnuが好きになりました。

 

つまり、「やりすぎない程度にオマージュすること」はむしろプラスに働くというわけですね。

 

皆さんもそういう経験ありませんか?

「ちゃんとした会社」のRPGシミュレーションゲームで過去の名作の台詞やちょっとした展開が引用されてたり、アニメの話のタイトルで知ってる小説や古いアニメの名前が使われてたりすると、嬉しくならないですか?そして、「それを知っている自分」にちょっと誇らしくなりませんか?

 

最近、というほど最近ではないですがファイナルソードとかありましたね。

あれはリスペクトが感じられないのでパクリです。

仮にリスペクトがあったとしてもあそこまで露骨だと流石に過剰です。

 

「分かる人には分かる」くらいが丁度いいのです。本人がオマージュだと言い張っても行き過ぎると不快感が勝ち、パクリになってしまいます。

 

ここで一度話を戻すと、King Gnu(というか常田さん)が嫌いだが、洋ロックは好きな人が一途や2992を聴いたら、オマージュではなく「いやパクリだろ!」と発狂するでしょう。

アニメが好き(悲報)でアイドルが嫌い(悲報)な僕がオタクを自称するジャニーズやアイドルを「ファッション陰キャが代」と嫌ってるのと同じです。これは仕方のないこと。

 

結局、パクリかオマージュか決めるのはその人の尺度次第ってことですね。人それぞれ。

 

その人が不快感を覚えたらその人にとってはパクリ、不快感を覚えず、むしろ嬉しくなったりしたらその人にとってはオマージュです。

 

なんか逃げの結論みたいになってしまいましたが、まとめると「色んなものからオマージュを感じられるくらい文化的素養を身につけたらおもろいよね」ってことですね!

みんながワイワイ楽しんでるのを後ろから腕組んで「○○のオマージュなんだよなあ・・・」と眺めるの楽しいですよ。

 

終わり

よい文化ライフを!

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

けじめ

忘れもしない。

10年前、Tシャツがへばり付くような暑さの夏だ。

 

小学6年生だった黒澤隆は、人を殺した。当時の彼には金が無かった。だから盗みに入ったら人がいたから殺した。それだけだ。

 

少年法のおかげで法律は彼を許したが、世間は彼のことを許さなかった。当時はインターネットが発展してなかったとはいえ、住所を特定されるくらいのことはされた。毎日のように暴言が書かれた手紙が届いた。その中には、日本語ではない言語で書かれたものもあった。カッターナイフの刃が大量に届いたこともあった。黒澤隆本人は施設に入っていてそこにはいないということは、彼らにとっては別問題らしい。

 

そこにいたのは母だけ。母は手首を切って死んだ。

 

施設から帰ってきた隆は心優しい伯母に引き取られ、名字を伯母に合わせて変えた。

彼女は「悪いのはあんたの父さんだからね。可哀想にね。」と口癖のように言っていた。

 

確かに父、俊夫は最低なやつだった。不倫をして母を捨ててからどこに行ったのか知らない。彼が盗みをしなくてはいけなくなった原因を作った男だ。

しかし不思議と隆は父を全くと言っていいほど恨まなかった。なぜかは分からない。

 

時が経ち、今ではそんな事件のことなど誰も覚えていない。報道されることもないし、隆の顔を見ても、誰もピンとこない。

 

今や隆は大学生になり、将来結婚するだろうなとなんとなく思える彼女も出来た。友達も、人並みにいる。

 

楽しい生活だが、このまま生きていていいのだろうかという不安が常に付きまとっていた。いつか、天罰が下るのではないか。

そんな悶々とした不安を少しでも和らげるために、出来ることはあるだろうか。

 

「被害者の家に行こう」

 

彼は決断した。

この事件に彼なりのけじめを付けようと思ったのだ。

謝罪をして、お互いに蟠りを無くす。追い返されてもいい。

 

元々決断力と行動力には定評があった。だからこそ、人を殺せたのだ。

 

8月11日。事件からちょうど10年の日を、決行の日とした。

 

 

 

 

 

 

17時頃に目的の駅に着き、隆は迷うことなく歩き続ける。10年経っても、忘れられそうにない場所だ。

 

大体15分くらい経っただろうか。

その場所は、少し古びてしまったことを除けば、10年前と何も変わっていなかった。行書体で「白井」と書かれた表札が目立つ、3階建ての大きい家だ。庭にある大きなブランコも、花壇も、そのままだった。よく手入れされている。

窓からは温かい光が漏れていた。知らない人が一見すると、幸せな家庭がそこにはあるように見える。

 

覚悟を意味する深呼吸をして、インターホンを押す。

 

5秒ほどの時が流れる。

 

「どちら様ですか」

 

中年女性の声がインターホンから聞こえた。

隆はこの声を知っている。

 

「黒澤隆です。」

 

自己紹介はこれで充分だろう。

名字を変えて以来久しぶりに口にする黒澤という名字に、一瞬戸惑ってしまった。

しかし、返ってきたのは意外な返事だった。

 

「存じませんね。主人のお知り合いですか」

 

隆は少し考え、まさか、と小声で呟いた。

 

「ええ、私白井さんの直属の部下でして。今回白井さんの助言のお陰でプロジェクトが成功したので、お礼に菓子折りを。」

 

「ああ、そうでしたか。主人はもうすぐ帰ってきます。どうぞお入りください。」

 

鍵の回す音が鳴り、ドアが開いた。

 

「あら、わざわざスーツでお疲れ様です。さあさあ、どうぞお入りください。」

 

隆は玄関に通される。

靴を脱ぎ、スリッパを履いて、リビングへと入る。

 

「今お茶をお持ちしますね。…悠介、お客様来たからテレビ消すわよ」

 

女性はテレビを消そうとしたが、隆は「いいですよ、少し賑やかな方が好きです。」とその手を止めた。

 

「それに、息子さんも退屈されるでしょう」

 

隆はソファで行儀よく座っている悠介に笑顔で会釈した。まだ会釈の意味が分からない悠介は気まずそうに女性に視線を移す。

 

「そうですか、ごめんなさいねぇ。」

 

女性はそう言い、テレビの音量を下げた。

 

「座ってよろしいですか?外は暑くて、くたくたで。」

 

本心だ。

 

「どうぞどうぞ。大変だったでしょうに。」

 

テーブルに腰掛けた隆は改めてリビングを見回す。10年前と何も変わってない。物事はそう簡単に変わることはできないことを知った。

 

お茶を差し出し、隆の前の席に女性も座った。

 

「宗介さんは会社ではどんな人なの?」

 

「…宗介さんは……常に頼りになり、助言も的確で、神様みたいな存在です。」

 

「あら。」

 

女性は嬉しそうに笑った。よほど夫のことが好きらしい。

 

「『宗介』…なのか」

 

「なにか言いました?」

 

「いやいや、何もないです」

 

独り言を聞かれそうになり、慌てて誤魔化した。

 

 

 

 

 

 

 

突然のことだった。

悠介が女性にパンを恐る恐る差し出し食べていいか尋ねてきたのだ。キッチンから見つけ出してきたらしい。

 

女性の楽しそうな顔が一変し、真顔になった。

 

「悠介!!いい加減にしなさい!!お客様がいるでしょう!!パンなんて勝手に食べろ!!そもそも夕飯まで待てないの??意地汚い!!」

 

悲鳴にも似た大声で女性は悠介を怒鳴りつける。悠介は完全に萎縮し、その場から立ち去った。 

 

女性はその真顔のまま隆を見つめる。

10秒くらいの沈黙が流れたあと、「ああ、そうか…」と女性の囁くような声が聞こえた。

 

「ごめんなさいね」

 

「いいんですよ。子育ては時に厳しくなければ。」

 

「もう帰ってくれませんか?」

 

「ええ。そう言おうと思ってました。」

 

「二度と来ないでください。」

 

「ええ。もう来ませんよ」

 

「帰れ!!」

 

返事はしなかった。女性の目には涙があった。

隆はそれ以上何も話さず、白井家を後にした。

 

帰路に付き、思考を整理しながらおぼつかない足取りで歩いていると、虚ろな目をした知っている顔の男とすれ違った。

 

すれ違ったあとしばらくして、隆は彼の後をこっそりつけた。

そして彼があの白井邸へと入っていくのを見て、疑念は確信に変わった。

 

彼こそが、白井宗介だ。

 

正確には、彼は「白井宗介とされている」。

 

 

 

 

 

 

 

隆は引き返し、また帰路に付いた。

人気のない路地に入り、ぶふっと一発吹き出すと止まらなくなった。

 

「あはは、あはははははは」

 

隆は笑いながらポケットから煙草とライターを取り出し、咥えて火を付ける。

 

一気に煙を吸い込み、気持ちを落ち着かせ、ふーーーーーっと吐き出す。

 

「……………異常だ。」

 

隆は呟いた。

 

あの女性…白井花子は10年前と比べて年老いてはいたが、確かに白井宗介の妻であり、白井悠介の母だ。

 

しかし、宗介も悠介もこの世にはいない。

隆が10年前に殺したからだ。彼女の目の前で。

 

出かけていると聞いて白井家を襲ったが、忘れ物をしたとかで一家揃って一度帰ってきてしまったのだ。それが彼らの運の尽きだった。

ナイフで何度も刺した。隆は人を殺したのは初めてで、どれだけ痛め付ければ人は死ぬのか知らなかった。35歳のエリートの宗介青年と4歳の将来有望な悠介少年は、12歳の隆の凶刃に倒れた。

隆が念入りに何度も刺していたおかげで、花子は隙を見て逃げることが出来、その場で隆は警察に掴まった。

 

さっき彼女が悠介として扱っていたのは、汚い、手入れも禄にされていない年老いたレトリーバー。

覚えている。10年前、隆によって飼い主が殺される様を間抜け面で見ていた犬。

パンを食べていいかの判断も出来ない、従順な「演者」だが、14歳を演じるにはあまりにも知能が低い。見ていたテレビは教育番組だったが、内容を理解していたわけがない。

学校などはどうしていたんだろうと隆は考えたが、その矛盾を正当化してしまうほどの強烈な妄想症を彼女は患ってしまったのだろう。

 

宗介のほうは、おそらくさっきすれ違った中年男性…宗介の弟である洋介が演じている。裁判のとき隆を鬼の形相で睨んでいたのを覚えている。

 

可哀相な男だ。隆は同情する。

亡き兄が愛した女性を救うために、日々彼女の狂った家庭ごっこに付き合わされてしまっている。隆は自分のしたことが想像以上に多くの人生を狂わせていることを知った。

 

 

 

 

 

だが、花子は「気づいた」

 

一向に知能が幼いままのレトリーバーを大声で叱り我に返ってしまい、黒澤隆の名の意味するところをじわじわと思い出し、隆を追い返してしまった。

 

これから彼女は自分のしてきたことを振り返り、真実を思い出し、発狂するだろう。

これは花子にとって幸せなのか不幸なのかどちらだろうか?隆は考えたが、分からなかった。

 

隆はこの期に及んで笑いが止まらなかった自分を冷静に客観視する。

父のことを嫌いになれない理由が分かった気がした。

 

5分ほどして、煙草を吸い終わり、隆は立ち上がる。

 

「さて」

 

深呼吸をして呟く。

 

隆は右手で鞄からナイフを取り出した。

左手に持っていた煙草を地面に落とし、踏んで消火する。

 

振り返ると、花子が包丁をこちらに向けて立っていた。表情はちょうど夕陽の逆光でよく分からなかったが、きっと怖い顔をしている。

 

「10年前のけじめ、付けないとな。」

けじめをつける…物事を綺麗に終わらせることを意味する言葉だ。

謝って、お互いの蟠りを無くすことだけがその手段ではない。隆にとって、今起こっていることは想定内だった。

 

彼には花子の怒りに狂った様を見ても尚、ここで死ぬことはないという確信があった。

 

決断力と行動力があり、そして何より彼女には人を殺せないということを、10年前から知っているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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たのしいTwitterの使い方

関東の方がポケサー員のTwitterの使い方講座みたいな記事を書いているのを見て僕もそういうの書いてみたくなっちゃいました

 

その記事は本当の基本中の基本みたいなことを書いていた(めっちゃ大事なことだと思いますよ、もちろん)ので、自分はもうちょっと踏み込んだところ・・・まあ「新入生向け」というか、見てる人が「分かるな~」となってくれそうな内容を目指します。

 

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ちくちく言葉はしなければしないほどよい

 

 

ちくちく言葉とは見てる人の心がちくちくと痛むような棘のある言葉のことです。

氏ね、ゴミ、カス、ドヒドイデとかいうポケモン使ってるやつ全員チー牛といった悲しい言葉はツイートしないようにしましょう。

まあ当たり前のことですね。

しかしちくちく言葉にも色んな種類があります。いくつか例をお見せしましょう

 

 

 

 

例1「彼女とユニバ行ってきた!!」

 

よくないですね。

「彼女」という言葉はちくちく言葉です。見た人が悲しい気持ちになります。

 

「え、大学生までに普通彼女の一人や二人出来るんじゃないの?」

 

うるさいですね・・・。

正論ばかり言ってると嫌われますよ?

 

しかしだからといって、「彼女いる奴詩ね!!!」と表立って目くじらを立てるのはよくない。世間的に見れば我々が異常の負け組で、普通なのは向こうです。

 

負け組としての自覚を持って自虐ツイートに励みましょう。その瞬間、「彼女がいない」という異常性がようやく意味を持って、輝くのです。

 

 

 

例2「フル単だった!嬉しい~」

 

これもよくない。「フル単」なんて最悪のちくちく言葉です。

場合によっては人を殺してしまいます。

殺人犯になりたくないなら、そのフル単ツイートは下書きに閉まっておいてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オタクであればあるほどよい

 

ポケモンサークルには色んなオタクがいて、それぞれがそれぞれのオタクアンテナを張り巡らせて、好きなアニメとか声優とかVとか曲とかのツイートをしています。

オタクとか関係なく、自分と好きなものが同じ人を見つけることは嬉しいことです。

あなたもオタクなら、そのオタク成分を存分にツイートしちゃいましょう。本当に色んな人がいるので、何かしら反応があると思いますよ。当たり前ですが、もちろんポケモンでもよい。

 

 

 

 

 

 

思想は弱ければ弱いほどよい

 

寛容な心が大事です。僕は正直自分のことを結構思想の強い厄介オタクだと自覚しているので、必死でそれが零れ落ちないよう気を付けてます(たまーに我慢できなくなって露呈しちゃうことがありますけど・・・。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

もう書くことないです。

凍結されない程度にオタクになりましょう。

 

まあでも結局何というか、大事なのは「何を言うか」じゃなくて「誰が言うか」なので、どんなツイートをしても仲良くしてくれる仲間を見つけましょうね。

 

終わり

 

 

 

 

 

フランスの森

女を引っかけた。

いや、正確にはあの女が俺を引き込んだと言ったほうが正しい。

 

白いワンピースに身を包んだお嬢様みたいな娘。顔は穏やかで整っていて、その微笑みには見る人を引き込むような魅力がある。

 

気が付けば声を掛けていた。時刻は22時。下心見え見えだっただろう。でも女はすんなり承諾してくれた。

 

店に誘おうとしたが、女は「もっと楽しいことしましょう」と俺を家に招いてくれた。

高そうなマンションの一室。中は整理が行き届いてて、とても綺麗だった。

 

「家具にはこだわってるのよ」

女は言った。

 

「例えばどこに?」

俺は訊いてみた。

 

「例えばこのタンス。あ、ベッドも。机なんかもそう。フランス産の木材を使ってるの。いい香りがするでしょう」

 

「それだけ?」

 

「なにか不満かしら?」

 

まあ、香りが最悪だと家に帰る気も失せる。大切なことだ。

 

「確かにいい香りだ。ここはもうフランスの森だな。」

 

「確かにそうね。森の中にいるみたい。」

 

しかしそれ以上に、俺はこの家には素晴らしいものがあることに気付いた。

 

「レコードプレーヤーか。」

 

「ええ。あらら、そういう物に趣があるの?素晴らしいわね。」

 

偉そうに。自分の趣味を他と比べて高尚だと勘違いしている人ほど厄介なものはない。

 

「なんか流してよ。」

 

試すような口調で俺は言った。

 

「言われる前からそのつもりよ。」

 

女は慣れた手付きでレコードをプレイヤーにセットして、針をそっと乗せる。

 

じんわりとした温かみを乗せ、音が鳴る。

 

俺は聴くなり、「ああ」とため息を小さくついた。

 

モーツァルトは好き?」

 

「どうだろうな。意識したこともない。」

 

反吐が出る。クラシックは別に嫌いではない。これはここでクラシックを流すこの女に対する失望だ。

だが勝手に期待して、勝手に失望したのは俺。別にいいじゃないか、ステレオタイプでも。道を外さず生きることは素晴らしいことだ、と心に言い聞かせた。

 

「ずっと立ってると疲れるでしょ。適当に座って。」

 

とは言っても近くに椅子はない。女のベッドに腰掛けるのは流石に気が引けるので、仕方なく床に座った。

 

今日は何をしていたとか、そういった他愛もない話を交わす。

内容は覚えていない。いつか来るであろう「そのとき」を待ちわびながら、ソワソワしていたからだ。 

痺れを切らした俺はついにもう1段階先に進もうと口を開く。

 

「酒はあるのかい?酔いたい気分だ。無いなら今から買うけど。」

 

「お酒、飲んだことないの。お茶ならあるわよ。もっとお話しましょうよ。」

 

俺は流石に怒ってしまった。ここまで男としての尊厳を踏み躙られたのは初めてだ。

 

「お嬢ちゃん。いくらなんでも純粋すぎる。確かに俺は何をしたいと思ってあんたに声を掛けたのか明確にしてない。でもな、少なくともそれは優雅にお茶を飲みながらお話することじゃないし、はっきり言う。俺は…」

 

俺はつまらん女の身の上話なんかこれ以上聞きたくない。興味あるのは抱かせてくれるかどうかだけだ。

 

とは流石に言えなかった。

 

「俺は…何かしら?」

 

女は意地悪く俺に訊いてきた。

その悪魔のような微笑みがまた魅力的で、俺は見惚れてしまった。

モーツァルトの美しい男声のハーモニーが響き渡る。何を言ってるのかは分からないが、俺のことを「臆病者」「色欲魔」と罵っているように思えた。

 

「俺は…」

 

女は瞬きせずに、その微笑みをずっと俺に向けている。

 

「俺は………男だ。あんたみたいな上品な女の話聞いても多分共感出来ない。だから、楽しくない」

 

「分かってない人ね。」

 

女はもう笑っていなかった。

 

「私明日仕事なの。寝ていいかしら?」

これからが曲の盛り上がるところだろうというのにレコードプレイヤーを強引に止め、女はこちらを見もせずおもむろにベッドに向かっていく。

突如訪れた静寂に俺は耐えられず、額を流れる冷や汗を感じながら思わず口を開いた。

 

「………俺は休みだ。…もう…ちょっと遊びたかったが、なら仕方ない」

 

屈辱を噛み潰しながら、平静を装いながら、俺は言った。

 

「最も家主は私。寝ていいかしら、なんて許可を取る必要なんてないわね。」

 

女はベッドに仰向けで寝転びながらふふふと一人で笑っていた。

寝ていいかしら、ですって。と独り言を言っていた。

 

「俺はどこで寝ればいい?終電はもう無いから、泊まらせてもらう。」

 

最後くらい図々しく行こうと、俺は言った。最悪床でもいい。

 

しかし、壁側に寝返りを打って携帯を見ながら、無愛想に女は言った。

 

「私自分が寝てるときに周りに人がいるのが耐えられないのよ。私の見えないところで寝て。申し訳ないわ」

 

俺は部屋から出て、廊下に布団を敷いて寝ようとしたが、「そこもだめよ。少しだけ目に留まってしまうわ。耐えられない。」と言われ、浴室に入り浴槽に体を埋め、そこで寝ることにした。

当然、全く眠れなかった。それは無理な体勢を取っていたことだけが原因ではない。

 

 

 

目覚めると、女は部屋にいなかった。可愛い小鳥は逃げてしまったらしい。クローゼットが開いており、「仕事」ってやつに行ったんだなということが何となく分かった。

 

仕事とはなんだろうか。OLなどではなさそうだ。正直、そもそも仕事をしているようには見えなかった。

 

しかし辺りを見回す内に、俺は気付いた。

 

クローゼットにあった服は、全て男物だった。

黒、茶色のコート、柄物の緑色のパーカーと並んで、奥の方に昨日着ていたワンピースが気まずそうに架かっていた。

 

レコードプレイヤーにはまだレコードが乗っていた。そういえば昨日のクラシックのタイトルを聞いていなかった。男性がひたすら同じことを繰り返し歌う曲だった気がする。レコードを取り出し、タイトルを見てみる。

 

モーツァルト『俺の尻を舐めろ』

 

俺はそれを粉々になるまで踏み潰した。

そのあと煙草に火を付け、一度ゆっくり吸ったあとベッドに投げ捨てる。燃え広がる前にあの家を後にした。どうなろうが知ったことではない。素敵なフランスの森だ。よく燃えるだろう。

 

だが悠々とした気持ちで駅に向かってる途中で気付いてしまった。

 

財布と携帯がない。ポーチの中に入っていたはずなのに。

俺は焦ったが、どこを探しても無かった。

代わりに昨日までなかったメモの切れ端がポーチの中に入っているのを見つけた。

 

そこには、走り書きではあるが、綺麗な字でこう書かれていた。

 

 

「純粋なのはどっち?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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